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雷門の組子格子ビル

  • COMMERCIAL

2022.09

東京都台東区雷門

銀座線浅草駅のA4番出口から出てすぐの雷門一之宮通りに面した敷地に計画されたテナントビル。コロナ禍で客足が鈍っていた中、またインバウンド客が再来を見越して計画が進められた。
このように間口が狭く奥行きの深い敷地(5.8mx20m)で、設計者は当初、手前にガラス張りのエレベーターと避難用のバルコニー、一番奥に屋外避難階段を設けて、ファサードの開放性をとる検討をしていた。我々がデザイン監修者として参加して、まず気になったのは、1Fの1/3を占めていた屋外避難経路だった。ピロティーにして路地風なファサードを敷地内に取り込むアイデアであったが、基準階で60m2確保できるところが、1Fのリース面積が37m2しか取れないことが問題だと思われた。
間口が狭い中で避難のためだけのバルコニーを設けるよりは、むしろ屋外避難階段を前面に持ってきて、1Fのリース面積を増やし、屋外避難階段の前面に新たなファサードを作る方が、通りに対してインパクトを与えられると考えた。
ファサード全体は敷地境界よりセットバックしており、通りに対してポケットパークを作っている。ファサード内にある屋外避難階段は、1Fに至るところで、ファサードから飛び出して、2Fへ誘う作りになっている。前面にある屋外避難階段と避難バルコニーが隣り合わせになりながらも独立性を保つために、耐火壁で区切られた。
ファサードに関しては、雷門に対してインバウンド客が期待する和のテイストを纏いながら、屋外避難階段に必要な開口率をとるスタディーを続けた。当初は足場の単管にメッキをしたものを束にして、茶室の下地窓をモチーフにしたファサードや、より繊細な障子のような格子を検討した。
最終的には、避難バルコニーの入り口を自然に取り込むことができるモンドリアングリッドのような大枠の中に、組子細工の格子の様々なバリエーションを入れた。組子の模様は吉祥模様と呼ばれ、健康、豊作、繁栄、長寿を願った日本古来の模様である。このファサードでは、不老長寿、長寿の薬として扱われた胡麻の実をモチーフとした「胡麻」、不断長久の意味がある、「紗綾形くずし」、家庭円満、富貴繁栄を願う「七宝」、魔よけの意味を持つ「千本格子」、力の安定の象徴の三角形を組み合わせた「帝つなぎ」といった格子でリズミカルなファサードを形成した。厚さ3mmのアルミパネルをレーザーカットで切り抜いて、それぞれの格子を作り、昼間はアルミ素地の銀色のファサードとして、夜は大枠部分に仕込んだ暖色の照明で金色の行燈のような表情を見せる。1Fのファサード部分は檜の組子をガラスで挟み込んだパネルで、組子の繊細さを表現している。

  • 敷地:東京都台東区雷門
  • 用途:商業テナントビル
  • 竣工:2022.09
  • デザイン監修:KEY OPERATION INC.
  • 設計監理:オクデザイン
  • 施工:平澤建設
  • 写真:上田宏
  • 敷地面積:115.23m2
  • 建築面積:79.66m2
  • 延床面積:456.90m2

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