神田小川町の靖国通りの裏に位置する3面を道路に面した細長い区画に計画された飲食テナントビルが竣工しました。
飲食テナントビルを設計する際には、テナントをどのように集合させて、どのように街並みに関わらせていくべきかを考えました。1Fは街を行きかう人々に直接アピールできますが、上階になると、レストランが集合した建物のイメージをビルとして作り、このビルに来れば、何らかの満足できる魅力的なレストランに出会うことができるというアピールが必要です。
このビルでは、前面道路に面してビルの外形を穿ったヴォイドをつくり、立体的な垂直ガーデンテラスを提案しました。前面のテラスは階によって大きさや形状が異なり、変化のあるテラスが積層しています。上下階で抜けている個所を作り連続させることで、上階でも接地感を出しています。ここでは人と交通が行き来する都市のダイナミックなスペースのなかで食事をするという体験を得ることができます。
また、積層する飲食ビルでは個々のテナントが完全に独立してしまっていることが多いですが、このビルではそれぞれのテナントがもっとお互いに関りを持ち、それぞれのレストランの客が、別のレストランにも来店していただく相乗効果を狙っています。
側面の道路に面している部分は開放的なので、全面ガラス張りとして、外から各レストランの内部が見えるようにするだけでなく、中からも開放的な空間を享受できるようにしました。オフィスビルのような外観になるのを避けるため、飲食の内装の雰囲気に合わせやすい黒の格子状のサッシュとしました。
容積率一杯の全階飲食テナントという商業的効率を要求される都心の中高層ビルで、ポーラスなヴォリュームによってできた各階のテラスを都市に開くことで、新たな公共性を備えた建築を提案しました。