各国大使館や高級マンションが多く立ち並ぶ南麻布の住宅地の一角に相続で分割された敷地に家族二人で住む住宅を計画した。この辺りには施主の曾祖父の大きな邸宅があったが、何代かに渡る相続で、敷地が小さくなり、建物は通りにも隣地にも近づくため、内部と外部をつなぐ、窓が重要なテーマとなった。
室構成に合わせて適当な開口を設けていくと、リビング、寝室や応接室といった室が並ぶ内部構成があからさまに外部に表出する。またリビングなどの大きめの開口では通りから中が丸見えになってしまい、日中もレースのカーテンを閉めてしまうことが多くなる。この住宅では内部からは開放感を味わいながら、外部からあまり中を見られない窓を試行した。窓に対して感じる開放感は窓との距離で大きく左右される。室内にいる場合、外部にいる時と比べると窓への距離が近いため、窓の幅や高さがある程度確保されていれば内部から十分に開放的に感じられる。一方で外部から見ると、余程建物に近づかない限り、窓の幅と高さがある程度に抑えられていれば、内部が見えすぎない。また内部構成を表出させないように、窓をなるべく均質に配列するようにした。
内部の各室は外壁に面した壁に並ぶ開口を必要なだけ獲得し、光と風を中に取り入れる。この大きさの窓は、ブラインドを閉じていなくても、外部から内部をあまり伺い知ることが出来ないが、内部からは外は良く見え、プライバシーを確保しながら開放感を味わえる。またこの均質な窓を隣地に面するファサード側にも回していくことで、どのような隣地状況の変化にも相対することができるように考えた。
周辺から自律的に隔絶するわけでもなく、現状の周辺に他律的に関係を委ねて開放するのでもなく、自律的に閉じながら開くことで、都市に豊かに住まうことができる住宅を目指した。
- 敷地:東京都港区南麻布
- 用途:戸建住宅
- 竣工:2024.01
- 構造設計:構造設計工房デルタ
- 設備設計:コモド設備計画
- 写真:小川重雄
- 敷地面積:100.75㎡
- 建築面積:70.00㎡
- 延床面積:258.47㎡