表参道駅から徒歩5分、アップルストアから入った原二本通りの突き当たりにある間口2mの旗竿敷地に計画された商業店舗とオフィスの複合施設。
本来なら近接する土地も取得してメインの通りに対して間口を確保してから建築すべき土地だが、この限られた間口からいかに奥の商業施設へトラフィックを引き込むかが課題となった。
都営青山北町アパート跡地に再開発されている北青山三丁目地区まちづくりプロジェクトへのアプローチとなる側道にも面しているこの敷地は、原二本通りからこの再開発の区画に抜けていく導線を誘発する小径を作ることで狭い接道を克服できないかと考えた。
奥で隣接した敷地に大きな木が生えた空地があったため、側道側と空地を結び、原二本通りからの小径と直交したT字型の小径とした。
アプローチ部分の小径は両側の隣接した建物に挟まれているため、それらの建物を隠しながら、開放感を失わず、昼も夜も人を引き込む建築的な装置として、高さ7mのゲートを連続させた。昼間はゲートの隙間から青空を望む事ができ、その隙間から落ちる光が時間毎に変化する陰影を床に描き、夜はゲート内側をライトアップする。ゲート部分が容積対象とならない様に、ゲート部分と隙間を1m毎の等間隔とした。
鋼板製のゲートは、アプローチ部分を半ばまで進むと左側にカフェの区画があり、ゲートと建物の外壁が一体化している。
直交する小径はアプローチの小径よりも幅が広く、その奥側は地下まで掘り込まれており、地上階の店舗を左右に隣地への抜けを見ながら地下の飲食店舗区画に自然に降りられる様になっている。
2階部分にはこの小径を挟んで分棟になっている区画をつなぐブリッジが設けられており、隣接する空地への抜けを確保しつつ、オフィスとしてフロア貸しすることも、分けて店舗区画にする事も出来るようにした。
3-5階はオフィス区画となっており、高度斜線、隣地でセットバックした部分を利用して、飲食区画の排風機などの設備機器や、オフィス隣接したテラスを設けている。
間口2m敷地入口から始まるゲートと建物は女性客を意識してコーラルカラーで統一している。手前のゲートが作るトンネルと奥の建物が同色であるため、小径が奥の建物と連続している事がわかる。ファサードはフロア毎に水平スラブで分節し、スラブ間をゲートと同じ様な幅のパネルをランダムに並べて開口を形成している。
北青山三丁目の再開発では住宅や商業施設だけでなく、3500m2の森も計画されている。表参道参道からこの森に向かって作られる小径が小さな参道として機能し、賑わいを創出する事を願っている。
- 敷地:東京都渋谷区
- 用途:テナントビル+事務所
- 敷地面積:380.30㎡
- 延床面積:1147.92㎡