PROJECTS

新御徒町の集合住宅

  • RESIDENTIAL

2024.06

東京都台東区

新御徒町駅から徒歩3分の敷地に建つ集合住宅。このエリアは江戸時代は奥州街道・日光街道として栄え、文房具、玩具を中心とする問屋街及びそれに関連する町工場街が形成された。

関東大震災後の区画整理で碁盤の目状になった街区が特徴的で、現在でも玩具、手芸等の問屋・専門店街として受け継がれており、古い低層の住宅や小さなビルが小さな敷地にひしめくように建っている。つくばエクスプレス新御徒町駅開業した2005年以降、高層マンションが多く建てられるようになった。

本プロジェクトでは2階建ての古い住宅と駐車場があった370m2の敷地に9階建て1600m2、39戸の集合住宅が計画された。その中で我々は外装と共用部のデザイン監修を行なった。

中高層のマンションは各住戸からの効率の良い避難のため、前面に連続するバルコニーを設けることが多い。空調の室外機置き場としても必要なため、多くの大規模マンションは戸境壁で仕切られたバルコニーが並ぶ外観が特徴的となる。持ち出しのバルコニーの場合、洗濯物やそこに置かれるものが丸見えになるため、この集合住宅ではバルコニーを窓開口のように見せて、内部の生活感が外に出過ぎないように調整している。

バルコニーの中は外装に温かみを与えるために、桜木町の集合住宅でも採用したウッドグレイナー塗装を採用した。木目テクスチャー刷毛の角度で木目が変化するので、同じ木目は決して出ることがない。コンクリートの表面に羽目板の幅程度に目地を入れて、その表面に下地となるか薄い色を塗り、その上に濃い色を塗って乾く前に木目刷毛で掻き取り、羽目板のような仕上げをコンクリートの表面に再現している。フェイクであるが手作りの痕跡がある、温かみのある表現になっている。この集合住宅では、裏側の共用廊下にもこの仕上げを施している。

隣接する建物が5-6階建てと少し高さが低いため、前面道路側と接道している裏側の道路だけでなく、小窓を設けた建物の側面も通りから見える。通常側面は意匠的な優先度が高くないが、四方から見えるファサードを意識して、壁面の凹凸と彩色で前面の開口が側面も覆っているかのように見せている。

エントランスのラウンジは、オープンなロビーの一部であるため、家具を置いてもそこを通る人の視線も気になり、実際にはあまり使われてないことが多いが、ここでは気分転換に住戸から出てちょっと座って本を読んだり、スマートフォンを見たりといったことを出来る居心地の良い空間を作るために、ランドスケープのような家具を置き、植栽で人からの視線を緩やかに遮るようにしている。

前面道路からエントランスへのアプローチは豊かな植栽が施され、緑が多くないこのエリアにポケットパークを作り、周辺住民に憩いの空間を提供している。

  • 敷地:東京都台東区
  • 用途:共同住宅
  • 竣工:2024.06
  • デザイン監修:キー・オペレーション
  • 設計監理:シティデザイン一級建築士事務所
  • ランドスケープデザイン:いろ葉デザイン
  • エントランスホール植栽:緑演舎
  • 施工:新三平建設
  • 写真:矢野紀行
  • 敷地面積:370.10 m2
  • 建築面積:216.76 m2
  • 延床面積:1620.63m2

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